人形劇団ポポロ  

平穏な日常の大切さ

忘れてならないことを、不意を襲う震度4の揺れであらためて思い出す。

あたふたしながら瞬間、日頃の不備をあれこれ思いめぐらせつつひとまず無事を確認して、「ああ、なんでもなくてよかった」と腰を下ろしてふと考えさせられました。

 

まだまだ揺れの続く熊本のこと、目に見えない放射線と格闘が続く福島のこと、70年たってもまだ戦後が続いている沖縄のこと、G7とかで初めてヒロシマを訪れる大統領のメッセージによってあらためて考えさせられる日本とアメリカの関係、何万人もの集会が憲法を守れと叫んでいるのにほとんど報道しない今のマスコミの姿・・・・・・平穏な日常の中でともすれば置き去りにされそうになりながら、さらに選挙が近づく中で見栄えのいい電飾のようなことばによってかき消されていくように思える「忘れてはならないこと」の数々です。

 

平穏な日常が確保されることがどんなに必要なそして欠かせないものか、しかも当事者にとっては誰にとっても緊急であり解決の施策が平等に行き届かなくてはならない筈ですから、どこまでも引き続き一緒になって格闘していこうと自らに言い聞かせています。

ひとまず自分にできることは60年間やってきた人形の舞台を通じて人々とりわけこどもたちに日常の笑顔を取り戻してもらえるように力を尽くすことから始めるほかないでしょうが。

 

駅のホームから見下ろしたところに《花しょうぶ育ててます》と立札があって細長い剣のような緑の葉のところどころに蝶々が羽を広げているように紫と白それに黄色の花びらがひらひら風にそよいでいて、菖蒲といういかめしい名に似つかわしくない優雅なたたずまいを見せていました。

旅から家に帰って辞書を引いてみると《花菖蒲》はアヤメ科、端午の節句の《菖蒲》はサトイモ科で別の植物とか。毎朝のウォーキングコースの道端にもあちこち咲いていて心をいやしてくれるので、水気のないところに咲いていて健気だなあと挨拶してみるのですが、だんだん萎れかかってきました。

季(とき)はさっさと過ぎてゆく。《しょうぶのとき》を忘れないようにしなくっちゃと、兜の緒ならぬフンドシしめなおしてさあ頑張ろう!

 

2016.5.19 人形劇団ポポロ代表  山根 宏章